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最高裁判所第三小法廷 昭和48年(行ツ)109号 判決

名古屋市中区栄三丁目一九番一五号

上告人

丸為株式会社

右代表者代表取締役

広瀬隆彦

右訴訟代理人弁護士

服部豊

名古屋市中区三の丸三丁目三の二

被上告人

名古屋中税務署長

沖島実

右指定代理人

平塚慶明

右当事者間の名古屋高等裁判所昭和四七年(行コ)第一九号法人税更正決定取消請求事件について、同裁判所が昭和四八年九月一八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人服部豊の上告理由について

所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高辻正己 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 服部高顕 裁判官 環昌一)

(昭和四八年(行ツ)第一〇九号 上告人 丸為株式会社)

上告代理人服部豊の上告理由

原判決には、以下に述べるとおり判決に影響を及ぼすことの明らかな法令違背が存する。

一、原判決は、丹下、広瀬両名の「相当な賞与の額」を算出する方法として次のような方法を採用している。

〈1〉 否認の年度に存した本俸表を基礎にして、部長職に適用されるべきいわゆる「特級表」を仮定する。

〈2〉 丹下、広瀬に右の特級表を適用して両名の従業員分給与を算出する。

〈3〉 右の従業員分給与を基礎にして、課長である木股と同様の方法により丹下、広瀬の賞与額を算出し、これをもつて両名の「相当な賞与の額」とする。

原判決が、こうした方法を採用したこと自体、極めて独断的で何等合理的な根拠もないことは、既に第一審の準備書面に述べたとおりである。

しかも、仮に原判決の右に述べた方法を一応肯認するとしても〈2〉に記した特級表の適用の仕方は、明確に経験則に違背していると言うべきである。

そもそも本俸表を制定する意義は、従業員に対し画一的に給与を決定し公正妥当な給与の支給を行うとともに、将来の給与額を予測することを可能ならしめることによつて勤労意欲を向上させようとすることに存することは何人も認めるところである。

従つて、仮定の特級表を丹下、広瀬両名に適用しようとするのであれば、その適用の仕方も既存の本俸表の適用規準に従うべきであることは自明の理である。

上告人会社に於ては、当初の号俸が、その勤続年数に応じて、毎年二号俸ずつ上昇するように適用されていたことは、原判決も認めているところである。

ところで、比準者の木股が課長に就任したのは昭和四〇年であり、その時の号俸は、三等級三号俸であつた。

丹下は、昭和二八年に広瀬は昭和三七年に、それぞれ部長に就任しているのである。課長の木股が、その就任の年に三等級三号俸であつたというのであれば、丹下は、部長に就任した昭和二八年に特級三号俸であるべきであり、広瀬についても同じように昭和三七年に特級三号俸でなければならない。又このように適用することこそ本俸表の本来の用い方である筈である。

とすれば、丹下、広瀬の各否認年度に於ける号俸は別表のとおりでなければならない。(別表は、上告人会社の昭和四〇年度の本俸表にもとづいている。上告人会社では、昭和四一年度に本俸表の改正が為されており、又昭和三九年度には本俸表が存していなかつたため、原判決は、昭和四〇年度の本俸表にもとづいて昭和三九年度の本俸表を仮想している。従つて、別表の昭和三九年及び昭和四一年度の号俸は、各年度の本俸表に沿つて記載すべきところ、理解を容易にするため昭和四〇年度の本俸表に統一して記入したものである。)

それを、原判決は、昭和四〇年度の木股の本俸が三等級三号俸であるから、同年度の丹下の給与は特級三号俸に、広瀬は、丹下よりも若くて勤続年数も短いから特級一号俸と認定するのが相当であると判示しているのである。一体このような認定をする合理的な根拠がどこに存するというのであろうか。

もしこれを是認するならば、昭和三七年度の丹下、広瀬の給与は「部長心得」としての等級、号俸を適用しなければならないこととなり、著しく事実に反することとなつてしまうであろう。

このように、原判決の右に述べた方法は、本俸表の適用に関する経験法則を全く無視しており、引いては、法人税法第三五条第二項の解釈を誤つており、破棄されるべきである。

以上

別表

〈省略〉

(いずれも等級、号俸は昭和四〇年度適用の本俸表による。)

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